病気や死への恐れ、人間関係から起こる悩みなど、人の一生にはさまざまな苦しみがつきまとうものです。ときには、自分の思い通りにならないことに対して憤り、その苦しみに振り回されてしまうこともあるでしょう。でも、できることなら苦しみに振り回されず、安らかに生きたいものです。
お釈迦さまの教えには、「人々を苦しめている根本的な原因は何か」、「苦しみから解放されるにはどうすればよいのか」という一貫したテーマがあります。
全ての人が避けることのできない様々な悩みに対し、お釈迦さまは「生きることは苦に満ちている。それは、あらがいようのない真理である。だから、生きることが苦しいのは当たり前ともいえるのだ」と説かれています。これだけを聞くと、なんだか救いのない話のようですね。ですが、お釈迦さまが伝えたかったのはむしろ、その解決方法。苦しみから解放され、安らかに生きるための方法を、仏教の教えとして私たちに残してくださったのです。
仏教が目指す境地は「成仏」、つまり文字どおり〝仏に成る〟ことです。"仏"とは世の中の真理に目覚め(=さとり)心は何にも乱されず、その智慧を活かして人々の苦しみや悩みを解決しようとする人を指しています。仏教や成仏というと、お葬式や死後の世界などを連想される方もいるかと思います。しかし、お釈迦さまが繰り返し説いていた教えは、私たちがいのちを授かっているこの"現世"で、いかに悩みや苦しみから開放され、イキイキと生きるかということに尽きます。つまり、"今"をイキイキと生きるための智慧、それが仏教なのです。
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