法華経は草木を仏となし給う
『上野殿御返事』/
弘安二年(1279) 聖寿五十八歳
今月の聖語
『上野殿御返事』/
弘安二年(1279) 聖寿五十八歳
=安穏への種=
法華経は、草木でさえ仏とする教えであり、全ての人びとをも仏としようとしています。まして、信仰し供養する人びとを成仏させないことはないのです。
成仏とは、心と身体が最も安定した姿のことです。現代は災害や人災によって、非常に不安な社会と言えます。しかし、不安な要素の中にも安定の種は必ず宿しています。この種の存在を信じる力が、不安を小さくし安心安定へと導きます。そして、これが安穏な社会づくりへの第一歩なのです。
『上野殿御返事』
このご遺文は、駿河国富士郡上野郷に在住した南條時光公からの供養に対しての礼状です。
物の価値は、環境や状況によって変化します。暑いときには水、寒いときには火が財となります。いただいた供養の品々は、今必要としている財であり、この功徳が成仏へと導く旨が述べられています。短文ですが、日蓮聖人の信仰がやさしく表現されています。時光公は感動して受け取り、信仰を深められたことでしょう。
弘安二年(一二七九)
聖寿五十八歳