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今月の聖語

今月の聖語

昔と今はかわるとも
法華経のことわりたがうべからず

日蓮聖人御遺文「兵衛志殿御返事」/
建治三年(一二七七年 聖寿五十六歳)

「今昔通同の道理」
池上兄弟と父との「日蓮聖人帰依」をめぐる争いは長くもつれあい、葛藤は久しくうずまき、悶着の度を深めた。兄、大夫志宗仲は強信を貫いた。弟、兵衛志宗長は父を捨て兄につくか、つまり信仰を貫くか、兄を捨て父につくか、つまり実利について家督を相続するか、択一の企路に立って苦悶をかさねた。
日蓮聖人は書状多数を兄弟に発して教導し、教示した。ことに帰趨にまよう弟への暁諭の言葉は激語を発して連綿としてつづいた。 
法華経第二十七章厳王品は、邪心の父王妙荘厳とそれを改信させた仏徒浄蔵・浄眼二子の物語である。昔、父のめざめをいざなった兄弟。今、池上兄弟も合力して法華経が明かす往事の因縁故事に習え。法華経はまことの言葉である。道理の言葉である。道理実現の言葉である。日蓮聖人は、全智を傾けことばを尽くして教導し救済せんとした。かくて兄二度の勘当を含む家庭争議は、ついに円満解決に導かれるに至る。法華経信仰をめぐる池上家の事件は、今昔通同の道理を鮮やかに実証したのであった。