人に物をほどこせば
我身のたすけとなる
日蓮聖人御遺文「食物三徳御書」/
弘安元年(一二七八年 聖寿五十七歳)
今月の聖語
日蓮聖人御遺文「食物三徳御書」/
弘安元年(一二七八年 聖寿五十七歳)
「布施」
「食には三つの徳あり、一には命をつぎ、二には色をまし、三には力をそう」。こう述べて掲示文となる。文意は明瞭である。そもそも食物は三つの効能を持つ。第一になによりも生命保善の糧であるから命を継ぐものである。また、第二・第三に健康体の容姿を育て、活力を生みだすもとであると。そして言われる。命をまし、色をまし、力をます三徳の食物を他人のために施与すれば人のためだけではなく、かえって我身を養い助けることになるのであると。
こう述べて「譬えば、人のために火をともせば、我が前あきらかなるがごとし」と告げられる。まことに明瞭で自明な指摘である。このように布施の意義と効能を説かれた文言は大変平易で、もっともと頷ける。布施・ほどこしは、かならずめぐり来って己の果報となる。物の施しも、目に見えぬ心の施し、親切や思いやり等も皆しかりである。
思うべし。所詮、まかぬ種は生えぬものである。ただし、人に施して慎みて念(おも)うこと勿れ。施した恩恵は忘れよ。