かたうどよりも強敵が
人をばよくなしけるなり
日蓮聖人御遺文「種々御振舞御書」/
建治元年(一二七五年 聖寿五十四歳)
今月の聖語
日蓮聖人御遺文「種々御振舞御書」/
建治元年(一二七五年 聖寿五十四歳)
「敵こそ味方」
提婆達多は仏陀の従兄弟で弟子だが反逆。新教団を創出して新仏たらんとした。さらに仏陀を殺そうと謀り破門された。釈尊に敵対した教団の破壊者。極悪人の代表である。
非道の仏敵提婆達多は、逆説的に釈尊に味方した。敵こそ味方。釈尊第一の敵こそかえって第一の善知識であった。そのことを「釈迦如来の御ためには提婆達多こそ第一の善智識なれ」の文が掲出文に接して語られる。
世間の例を見てもこのことは言えよう。強敵が人を育て、競争相手がわが身を磨き鍛えるのである。思うに戒心すべきこと、用心しなくてはならぬことは、遠くではなく近くにあるものだ。釈迦に提婆、太子に守屋。毒薬も変じて薬となる。
逆境に身を置きながら奮励これつとめ、味方少なく敵多かった日蓮聖人のしみじみとした述懐の言葉である。