心の散歩道

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孝養

先日、「家相を見て欲しい」と女の方がお寺に訪ねてきました。築二十年くらい経つのですが、最近悪いことが続くというのです。

そして、話をよく聞いてみますと、そこの家ではご先祖様を全く祀っていないというのです。ご主人の両親は他界しており、他に兄弟もいないそうですから、ご先祖さまをご主人以外に祀る方はいません。ところが、お仏壇も、お位牌もなく、もちろん追善供養もしたことがないというのです。お墓は他県にあり、葬儀は無宗教だったそうです。

日蓮聖人のお言葉の中に

「一切の善根の中に孝養父母は第一にて候」という言葉があります。

「善根」というのは善行のことで、よい果報をもたらす善い行いのことです。「孝養」というのは、子が親に仕えることで、亡くなってからする孝養は追善供養になります。すなわち、孝養はかならずよい果報をもたらすことを日蓮聖人はおっしゃっているのです。

ご先祖さまを祀ってないから悪いことが起きる、祀っていれば悪いことが起きないというものではありませんが、孝養というのは親から生まれた人間として絶対に必要なことでしょう。それを全くせずに、悪いことが続いたからといって「家相」を気にするというのは「墓相」にこだわって墓を建て、全くお墓参りをしないようなものですよとお話しいたしました。

そして、親が先祖を敬う姿を見て、子ども達にも、ご先祖様、両親を敬い、感謝する心が育ち、家族の絆が深まり、家族に悪いことが起きてもお互いに思いやる心で乗り切っていくのではないでしょうか。