心の散歩道

心の散歩道

強盗

お釈迦さまが、法華経を説かれた、霊鷲山を訪ねました。

この町に入る途中「これから先は、非常に危険な村を通りますので、皆さまは窓際に荷物を置き、カーテンを引き、通路側にお座り下さい。石を投げられてガラスを割られることがあります。また外を覗かないようにして下さい」と添乗員さんが言いました。

バスは村中も粗末な家が並んでいる軒をかすめ、ホコリを立て、スピードをあげて走ります。スピード制限の標識はなく、「住民、歩行者の安全よりも、自動車優先の国です。気をつけて下さい」とインドに来て一番最初に教えられたのを思い出しました。

道路は悪いしバスは徐行する事なく、村中を突っ走られては、村人も石ぐらいは投げるだろうと思って、カーテンのすき間から車外を覗いていましたが、何事もなく通過しました。

バスを降りると「バラバラにならないで、かたまって下さい。今朝。この近くに強盗団が出て、日本人が襲われました。日本山のご住職が病院に付いて行かれてます」と添乗員さんが叫びます。

岩陰から出てくるだろうか、路肩に座って物乞いをしている人が強盗に変わるのだろうか、と少しびくびくしながら、団体の真ん中に居るように気をつけます。

石も投げられなかったし、強盗も出なかったし、添乗員さんが気を引き締めるために言ったかな、と思いましたが事実でした。

次の朝、ホテルの新聞に「早朝、広島の団体九人が、武装した十二人以上のインド人に、襲われた。二人ケガをし、九万円と三千ルピーの現金、パスポートと金の指輪を強奪された」と載っています。一日一食も食べられない人もいるインドに、裕福な日本人が隙だらけで、お金を撒きながら物見遊山で旅行しているのは、どうぞお盗み下さいということかもしれません。