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日蓮宗メールマガジン11月号

「たらいの中の水」

毎週、楽しみにしているテレビ番組があります。

全国各地の隠れた名店に密着取材を行うその番組では、食を通して繰り広げられる店主や従業員、お客さんとの人情溢れる掛け合いにスポットが当てられます。

鳥取のとあるお店が紹介された時のこと。そこにはお客さんに、次から次に「食べんちゃい」と小鉢をサービスする老年の店主の姿がありました。そのあまりのサービス精神に取材班が「なんでこんなにサービスをするんですか」と問うと

「人生はたらいの中の水よ。たらいの中の水を自分の方にかき集めたら、絶対に向こうに流れてく、逃げていくのよ。ところがあんたな、水を向こうに向こうに押すと、絶対に水は自分の方へ流れてくる。世の中は、たらいの中の水なんじゃ」

と、目を細め語る店主の姿が胸に響きました。

仏教には「回向(えこう)」という言葉があります。
今、生きている自分が修めた善い行いの功徳を、亡き人をはじめ他者へと回し向け、その安寧を祈ることを意味します。

日蓮聖人は『種種御振舞御書』というお手紙の中で、自身が法華経に命をかけることで積まれる功徳は、亡き両親に手向けるともに、その余りはお弟子やご信者の皆さんにお配りしますと明言されています。このお言葉に倣うならば、今に生きる私たちも、日蓮聖人が積まれた功徳をいただいているのです。

たらいの中の水をかき集めているか・巡らせているか…いざ自分の振舞いを思い返すとどうでしょうか。

季節は実りの秋。功徳という実りは独り占めするのではなく、日蓮聖人のように多くの方に回し向けることで、本当の心の豊かさと人は出会うのではないでしょうか。

【お知らせ】
日蓮宗宗務院伝道部より、今月の予定をお知らせ致します。

1日 加行所入行会
11日 小松原法難会
13日 日像上人会
28日 いのりの日