日蓮宗メールマガジン4月号
「随喜の心」
春の気配とともにお檀家様N家のまだ冬枯れの残る庭に突然咲いた黄色い花。Nさんは種をまいたことも苗を植えたこともない花。その花は仏教の開祖、お釈迦様がお生まれになられた4月8日の誕生花(*1)である「ヒメリュウキンカ」だった。Nさんは
「なんだかありがたいですね。我が家によくぞ咲いてくれました。」
と弾んだ声で話をされていた。その声で私もなんだか嬉しくなった。Nさんのように心から喜び、ありがたく感ずることを「随喜(ずいき)」という。『法華経』にはお釈迦様の滅後、お釈迦様のいのちが永遠であり、永遠に私たちへ救いの手を差し伸べてくださっていることを信じ、随喜した時の功徳について説かれている。「『法華経』を聞き喜びを得た者がその喜びを他の人に伝え、聞いた人が喜びを得て、さらに他の人に伝えていく。そのように順々と伝わり第50人目の人が『法華経』の一句でも聞いて心から随喜すれば計り知れない福徳を得ることができる。ましてお釈迦様の面前で『法華経』を聴き、帰依する人の功徳の大きさはいうまでもない(『妙法蓮華経随喜功徳品第十八』筆者による意訳)」と説かれている。
最近新しくお檀家様になられたKさんは、お母様がご逝去されるまで、ほとんど仏教に触れる機会がなく、もちろん『法華経』も初めて見聞きした方だった。先日
「母親の祥月命日のお経をお願いできませんか」
と連絡があった。祥月命日の読経の後、Kさんが
「毎日なんだか忙しくて母のことを忘れかけていたんですが、お願いしてよかったです。お経を聞いていると心が穏やかになりますね。ありがたい気持ちになりました。今度は姉も娘も一緒にお参りさせてもらえればと思います」
そのようにおっしゃるKさんのお姿がとても尊く感じられた。
日蓮聖人は現代において初心の者が『法華経』を修行することについて「ただ一心に仏の教えを信じ南無妙法蓮華経と唱えることは、少しでも信じ理解したことの功徳であり、喜びの心を起こす功徳である。これがすなわち法華経の本意である(『四信五品鈔』筆者による意訳)」とおっしゃられている。
ひとりでも多くの人が、南無妙法蓮華経のお題目をお唱えする機会を増やしていけるよう、すでにお題目を心にたもち続けている皆さんとともに励んでいきたいと思う。
*1「誕生花」生まれた日にちなんで1年365日それぞれに特定の花を割り当てたもの。
参考資料 『誰でもわかる法華経』 庵谷行亨著 大法輪閣刊
『法華経・全28章講義』 浜島典彦著 大法輪閣刊
『はじめての法華経』 菅野日彰著 ユーキャン刊
『法華三部経 三木随法』 編著 東方出版刊
『日蓮大聖人遺文大講座』 小林一郎著 平凡社刊
『昭和定本 日蓮聖人遺文』 立正大学日蓮教学研究所編 身延山久遠寺刊
『国語辞典』 旺文社
【お知らせ】
日蓮宗宗務院伝道部より、今月の予定をお知らせ致します。
8日 釈尊降誕会(花まつり)
28日 立教開宗会・いのりの日