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日蓮宗メールマガジン5月号

「甘露」

四月に花屋をのぞくと早くも店先に色とりどりのアジサイが並んでいました。花々を眺めていたら、あるお寺にお伺いした時にご住職様が境内のアジサイを指し「あれは甘茶なんですよ。」と教えてくださったことを思い出しました。
甘茶はアジサイの仲間で、観賞用のアジサイの葉よりも光沢がなく、葉を加工すると砂糖の主成分であるショ糖の400倍以上の甘さとなり、砂糖が普及する前は天然の甘味料として重宝されていたそうです。
お釈迦様のお誕生をお祝いする「花まつり」で、誕生仏に甘茶をかけますが、お釈迦様の誕生を喜んだ竜王が甘露の雨を降らせた、という伝説にちなんで甘茶を使います。栗や魚を甘く煮たものを甘露煮といいますが、甘くておいしいことを甘露と表わします。
妙法蓮華経薬草喩品第五の中でお釈迦様が
「心身が枯れ渇いている者たちをうるおし、苦しみから解き放ち、現世における幸せと喜びをあたえ、涅槃という最高の楽を与える。そして生きとし生けるものすべてを幸せにするためにこの世に出現して、多くの者のために甘露のように清らかな教えを説く」(正木晃 著:『現代日本語訳法華経』より主意を抜粋)とおっしゃられているように、仏様の教えを甘露に譬えられています。甘露は苦しみが満ちあふれているこの世で私たちが幸せに生きるために必要なものです。薬草譬品には、仏様の慈悲の御心と、皆が仏に成れる教えを、生きとし生けるものに仏様が平等に降り注いで下さっていることも説かれています。
日蓮聖人は生きとし生けるものの苦しみは日蓮聖人自らの苦しみであるとおっしゃられ、世の中すべての安らぎを祈り「南無妙法蓮華経」を日本中のすべての人に弘めてくださるために自らの命を惜しまれませんでした。そのお心持ちは、59歳の時にしたためられた、『諌暁八幡抄』で「母の赤子の口に乳を入れんとはげむ慈悲なり」と述べておられます。母乳は母親の血液から作られ牛乳よりも甘いそうです。甘露のお題目を心を込めて感謝の気持ちで日々お唱えしていきたいですね。

【お知らせ】
日蓮宗宗務院伝道部より、今月の予定をお知らせ致します。

12日 伊豆法難会
28日 いのりの日