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日蓮宗メールマガジン4月号

「平和願う さくら色のお題目」

芽吹きの春です。
桜の便りも各地から届き始めました。

私が生まれ育ったお寺の境内には10本ほどの桜があります。戦没者慰霊のために植えられたものだと伝え聞くので、樹齢はおよそ75年。

終戦後、焼け野原となった日本各地に、慰霊と復興のシンボルとして沢山の桜が植えられたと言います。我が家の桜もそれに連なったものでしょう。戦禍を経た大地に深く根を張り、幹も太く、樹皮はゴツゴツ。冬空の下、じっと身を固める姿は水墨画のようです。

そんな老木に変化が起きるのが、桜のつぼみが膨らみ始める頃。
花が咲く枝に限らず、根から幹にかけ、樹皮全体がほんのりピンク色を帯び始めます。まだ風の冷たい春先に、人知れず色味を帯びるその姿を目にしては、老骨に鞭打ちながらも、今を生きる私たち、そして、かつての戦争で亡くなられた方々を慰めようとする桜の魂を感じます。

日蓮聖人は晩年9ヶ年を過ごされた身延山の様子を

「吹く風も、風にゆれる木草も、流れる水の音までも、この身延の山においては、皆全て南無妙法蓮華経と唱えている」(筆者による意訳)
『波木井殿御書』弘安5(1282)祖寿61

という言葉で描写されています。

日蓮聖人のお耳に届いていた大自然が唱えるお題目。
その響きはどんなものであっただろうかと思いを馳せる時、戦後の日本を平和とともに彩ってきた全国各地の桜も今、どんな声でお題目を唱えているのだろうかと、春風の中、そっと耳を澄ませます。

【お知らせ】
日蓮宗宗務院伝道部より、今月の予定をお知らせ致します。

8日 釈尊降誕会(花まつり)
25日 『如来滅後五五百歳始観心本尊抄』述作750年
28日 立教開宗会・いのりの日