ホーム>日蓮宗メールマガジン>日蓮宗メールマガジン10月号

過去のメールマガジン

日蓮宗メールマガジン10月号

『最上のことばを考える』

「コロナに負けるな!!」
近頃、このような言葉を耳にすることが多くなった気がします。

「がんばれ。負けるな。大丈夫。なんとかなる。」
これらは、人を励まし元気を与える為によく使われる言葉です。
実際に私もたびたび使うことはありますし、言われて励まされることもあります。
しかし、これらの言葉は受け取る側の状況や場面によっては、相手を励ますどころか反対の捉え方をされる場合があるように思います。

例えば「がんばれ」や「負けるな」は、人を叱りつける時にも使われます。
「叱咤激励」という四字熟語があるように、「叱ること」と「励ますこと」は同じニュアンスで使われることがあります。
「がんばれ」と言われれば、「もう十分がんばっている」と感じる人もいるかも知れません。
「大丈夫。なんとかなる」という言葉は、受け取る側に気持ちの余裕があれば良いでしょう。しかし、この瞬間を心から苦しんでいる人に対して言うのは、説得力がないように感じます。
そのように考えてみると、純粋に人を励ますことが出来る魔法のような言葉は、この世には存在しないのかも知れません。

それでも、私たちは日常的にだれかの言葉によって励まされ、何かを成し得るための原動力になっているはずです。
また、自身の言葉がだれかの支えになっている事もきっとあるでしょう。
言葉には素晴らしい力があります。

お釈迦様は、悩みや苦しみを抱える多くの人々を言葉によって励まし、教化された方です。
仏教における教えは、お医者さまが患者の容態に応じて施す治療・薬・処方箋のようなものという意味から「応病施薬(応病与薬)」と言われます。
患者の状態に応じて、患者を健康にするために施される治療は異なってくるように、お釈迦様は相手の能力や心境に合わせて柔軟に教えを説かれました。
これがお釈迦様の教えが「八万四千の法門」と表現される理由です。

「最上の良いことばを語れ」「好ましいことばのみを語れ」
原始仏典の『スッタニパータ』にはこのように説かれています。

お釈迦様のように巧みな言葉の使い手にはなれないかも知れませんが、言葉の力を信じて相手の状況にあった言葉を探す努力をしていきたいものです。

そのためには、相手の立場に身を置く意識が大切かと思います。
これは仏教における対人関係の基本姿勢です。
相手がどのような状況に置かれているか、自分が相手の立場だったらどんな言葉をかけて欲しいか。
そのように思いを巡らすことで、自然と好ましい言葉は生まれてくるのかも知れません。

【お知らせ】
日蓮宗宗務院伝道部より、今月の予定をお知らせ致します。

10日 佐渡法難会
13日 宗祖御会式
28日 いのりの日