いのちに合掌

インタビュー

公開日時:2023/09/13

【インタビュー】

星弘道師

日本芸術院会員・神奈川県本山妙純寺貫首

芸術院会員の星弘道師が
宗門推進の「いのちに合掌」揮毫

「いのちに合掌」の書は日本芸術院会員(書)の星弘道(日龍)師(神奈川県本山妙純寺貫首)によるものです。
星師に「いのちに合掌」の言葉や今回の揮毫について話を聞きました。

戒行寺でのインタビュー動画並びに日蓮宗新聞の取材に対する記事をそれぞれ掲載しています。
ぜひご覧ください。

 

新宿区戒行寺にて撮影したインタビュー動画(令和5年5月30日撮影)
この度「いのちに合掌」という言葉を揮毫いただいた星弘道(日龍)師に想いを述べていただきました。

 

日蓮宗新聞インタビュー記事(令和5年4月1日号掲載)

尊さ、重さを感じられる書を求めた

――いのちに合掌」という言葉や今回の書についてどういうイメージを持ったのでしょうか?

星師=宗門運動「立正安国・お題目結縁運動」のスローガンだったので馴染みがありましたが、本当に重みがある言葉ですね。なので、風で飛ばされてしまうような軽々しくないイメージを書に込めようと思いました。一口に書家と言ってもさまざまで、書を飾り的に書く人もいれば、筆の遊びのような感覚で書く人もいます。私は、私が書いた〝字〟をもしも裂いたときに〝血〟が出てくるような線を求めて書に向き合っています。今の時代、ウクライナでの戦争もそうですけど、いのちが軽々しく扱われています。そういった状況を考えても日蓮宗の僧侶も檀信徒もいのちの尊さや重さをきちんと感じなければいけない。なので重みがあるドスンとしたイメージを書に込めました。

――〝血〟がでるような線、ということは星師にとって書は〝いのち〟ですか?

星師=一生をかけてきたことが「書」なのでそうですね。だから今回の言葉と書が私のなかでマッチングしていると思います。でも、この書に関していうと「いのちに」というひらがなと、「合掌」という漢字の組み合わせのマッチングは大変でした。漢字で「生命」や「命」と書く方が本当はバランスが良いんですけど、イメージ的には堅いですね。ひらがなでの「いのち」は受ける側がいろいろとイメージを膨らませてくれると思います。

――「いのち」についてどう考えていますか?

星師=親を縁として自分があり、その親にもまた親がいます。遡っていくと無限に広がっていきますよね。そしてその因縁がつながって今、自分がいる。それだけの影響をもった1人ひとりのいのちだから粗末にできるわけがありません。だから簡単に〝自分のいのちは自分が管理しても良い〟という気持ちを持たれるのは嫌です。つまり自分のいのちを自分で絶つことです。〝自分〟にはものすごく後ろに引きずっている因縁のいのちがあって、今のいのちがあることをちゃんと考えてほしい。いのちは本当に軽いものじゃない。

――「合掌」についてはどうでしょうか。

星師=語呂合わせですけど、手のひらのシワとシワを合わせれば〝幸せ〟。甲の節と節を合わせれば〝不幸せ〟。本当に不思議ですよね。合掌の状態は人間の調和を表して幸せ。互いに背を向き合って喧嘩をすれば不幸せな世界。当然、合掌という幸せな世界を目指すのが私たちの役割だと思います。

――そういった思いで書きあげられたものなんですね。

星師=自分が納得するまで何枚も何枚も書きました。世の中に「いのちに合掌」の言葉と精神が広まってくれることを願っています。

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