宗務院
2012.03.15
地域社会とお寺の活性化アイデア コンペティション 結果発表!!【活動部門】
【応募総数】21通
【審 査 日】 平成24年2月14日
【審 査 員】 柘植海潮(過疎地域寺院活性化検討委員会委員長)
立石隆教(過疎地域寺院活性化検討委員会副委員長)
望月義仁(過疎地域寺院活性化検討委員会委員)
山下義孝(過疎地域寺院活性化検討委員会委員)
【受賞作品】
大 賞
応募者:川手正順さん(静岡県、妙泉寺)
【活動の概要】
富士山の西麓、豊かな自然に囲まれた里山にある妙泉寺で、月1回だけ開催される小さな小さな「ようちえん」です。
地域の方々がお寺をもっと身近に感じられるような活動を目指し、住職とその仲間たちが協力して企画・運営しています。
- 自然や目に見えないものへの畏敬の念などを幼児のうちに醸成することはとても大切なことです。昔はほっておいても、そのような機会はたくさんあったが、現代ではそれが難しくなってきています。この事例は、地域の豊かな自然環境を生かし、寺院が地域教育の一役を担って子育てに十分な準備とスタッフをそろえて人格形成に貢献していることに対して大いに評価するものがあります。
- 寺子屋は、寺院活動の原点。この事例は継続性があり、地域からも支持され、地に着いた活動となっている点は素晴らしいと思います。次世代を担う人たち(子どもと若い夫婦)がお寺に親しむためには、このような活動が大切です。
- 寺子屋は全国のお寺で開催されていますが、年一回、カリキュラムも例年決まった内容になりがちです。しかし、この事例では、毎月1回の開催、またその内容も地元の仲間達がそれぞれアイデアを出し合い、自然を活かした五感に触れるような内容(授業)をみんなで企画・運営している点が評価できます。決して大きいお寺、都市部のお寺ではありませんが、「森と寺子屋のようちえん」というタイトルの通り、自然豊かなお寺の立地・地域性を活かした寺子屋をおこなっている点も素晴らしいと思います。お寺が教える、心の授業。全国各地のお寺でも、このように地域の人たちとの距離がぐっと身近になるようなお寺の活動が求められます。
優秀賞
応募者:吉野俊幸さん(和歌山県、安楽寺)
【活動の概要】
「仏と仏が出会った。そこにあるのは、小さな浄土である。将来、家庭という浄土を築き、そこに生まれる子は仏である。」をコンセプトに、お寺で、男女の出会いの場を提供している。
【審査員からのコメント】
- 過疎地域において、結婚できない若者が激増しています。行政もその対策を打ちながらも具体的なカップル誕生につなげるのは至難の業となっています。そのような地域の重要な問題に寺院が乗り出し、その持てるネットワークを活用して地域の問題解決に貢献する姿勢は賞賛に値します。カップル成立の確率の高さも驚きました。寺院という環境とカリキュラムの質の高さなど大いに評価できる事例です。
- 最近はアイデア部門審査員の堀内さんの活動により、各地で『寺コン(お寺でコンパ)』が開催されているが、この事例では宗派を超えて地域の寺院が共同開催している点が特徴的。地域の社会問題とお寺が向き合い、宗派を超えてお寺がその問題解決に取り組む姿勢が素晴らしい。お寺が核となって、人と人を結び、さらに地域と地域を結んでいる。また、この『寺コン』は若い世代がお寺に訪れる良いきっかけとなる。
優秀賞
応募者:中浜耕平さん(石川県、元高等学校校長)
【活動の概要】
「山の寺が、人をつくり、町をつくる」とのコンセプトのもと、有志の『山の寺地域振興会』が、山の寺の地域発展・環境美化・歴史地域遺産保全を目的として活動。地域のお寺をまわり、「山の寺学」を開講。平成23年の活動としては、山の寺「十七石仏観音巡り」表示設置や「瞑想の道百選」の遊歩道清掃、寺院群説明看板と道しるべ設置、等の活動をおこなっている。
【審査員からのコメント】
- 地域の寺院が力を合わせて、地域の宝や地域の文化を地域の方々に認識してもらい、その地域に誇りを持ってもらう活動として寺院を中心にするという発想はユニークです。また、地域の寺院の住職が思いを一つにして、それぞれが役割分担をして取り組んでいる姿は、好感が持てます。「山の寺学」というネーミングも面白い。関心を高めるためにも、幅広い参加者を募るためにもこのような工夫は必要でしょう。
- 寺院を中心に地域の歴史文化の講座の開催や遊歩道清掃、地域興し、小学校のオリエンテーションなど多岐にわたる活動にひろがっている点が素晴らしいと思います。地域の方々が熱い思いでお寺を盛り上げる活動を行ってくれることは、大変ありがたいことですが、そこで一番大切なことはお寺を預かる住職の意識を向上させること。そこに住職のヤル気が加われば、さらに大きな意味をもった活動となるでしょう。
優秀賞
応募者:石井見秀(京都府、大漸寺)
【活動の概要】
日蓮宗の本山、立本寺では、日頃より小中高生に門戸を開放し、課外授業や修学旅行の研修にお寺を活用してもらうことで、奉仕の精神や思いやり、譲り合いの精神を育んでもらえる環境を提供している。体験は3時間くらいを目安に清掃、写経、法話、お寺での作法などおこない、情操教育の一助をになっている。
【審査員からのコメント】
- 修学旅行生などを受け入れ、寺体験という、受け身の旅行ではなく、能動的な非日常を経験することで、普通では得難い新鮮な感覚を持っていただいているようです。観光地での寺院の対応の仕方にこのようなやり方があったのかという驚きがあります。また、それを受け入れる子供たちの感受性を寺院は大いに再認識すべきでしょう。
- 学校(修学旅行)とタイアップすることで、地域社会の情操教育の一環を担っている点が素晴らしい。また、京都という立地、お寺の広い境内、建物を有効に活用した取り組みであると感じます。
入 賞
~樹齢400年(伝説樹齢712年)の大銀杏の力を
地域の活性化と信仰の結びつきに~
応募者:田中克彦(島根県、金言寺)
【活動の概要】
お寺の境内にある大銀杏の力を地域の活性化と信仰の結びつきにして、①豊かな自然と樹齢400年の大銀杏を守り、日尊上人御開山のお寺として信仰を広めていく、②檀家・地域・行政・が一体となって縁を作り、絆を深め大銀杏と金言寺一帯の自然保護活動を行い、観光資源として地域を活性していく、③大銀杏を守り、地域の自然やお寺の歴史や伝統文化を大切にしていく「ふるさと教育」を推進していく、を3つの柱として様々な活動に取り組んでいる。
【審査員からのコメント】
- 樹齢400年の大銀杏と茅葺きの本堂の美しい景観を中心に、檀家、地域、自治会、行政が一体となり地域活性化を目指して環境の整備、文化的活動の推進、教育への活用が図られています。またそれが新たな地域の結びつきになって、次への展開を図るという連続性のある活動事例です。空間的にかつ観念的にも地域コミュニティの中心的役割をこの寺院が果たしているのがわかります。今後のさらなる発展を期待させる事例です。
- 大銀杏を中心に地域の人たち(小学校など)を巻き込んだ活動は多岐に広がっており、「お寺が、地域のコミュニティの場となり、お寺に集まることで人と人のつながりや絆が深まり、人のために役立つ喜びを感じることができる場とならなければならない」というお寺の姿勢が表れている素晴らしい取り組みだと思います。
入 賞
応募者:米田宣雄(島根県、連紹寺)
【活動の概要】
「お寺は、おじいさんおばあさん達だけのものじゃない、若い人をお寺に呼ぼう」という住職の一言から大きな家族のようなお寺となり、青年会発足、夏祭りを開催。さらに、「お寺でキッズルーム」の実施、広報「ふれあいつうしん」の発行、「お茶屋かふぇ・ひな祭り&お月見会」の実施、地域イベントへの参加、地域中学生の交流、国際交流など多岐にわたった活動に取り組んでいる。
【審査員からのコメント】
- お寺に若い人を呼ぼうということで始まった各種の活動が、檀信徒を中心に継続的に実施されてきていること。さらにそれらの活動を誇りを持って実施し、それが地域へも広がり、次々と新たな展開へとつながっていく様は、寺院と檀信徒の活力を感じさせるものです。
- お寺、僧侶、檀信徒が一体となり、特に子どもたちの笑顔がたくさんあふれる温かい取り組みの数々は、「次世代育成」に取り組むお寺が参考にすべきものばかりです。この事例のように、お寺の活動に、色々な世代の人たちが関わる機会をつくることはとても大切なことだと思います。
【総 評】
応募作品にはそれぞれ思い入れがあり、寺院の住職や檀信徒のやる気を感じさせるものが多かったです。地域性を生かした取り組み、寺院の特長を生かした取り組みなど参考になる事例が寄せられたが、中には、分厚い参考資料や、DVDなどが添付されているものもあり、その意気込みを感じさせるものでした。応募の熱意と意気込みには敬意を表する次第です。
受賞活動全体を通して、住職一人ではなく檀家や地域の人たちを運営側に巻き込むこと、若い世代も一緒に活動すること、地域の人たちの支持を得ること、教育に携わること、そしてご住職の熱意のもとで地道な活動を継続しておこなうことが大切だと感じました。今回、応募いただいた活動は少なかったですが、全国には「社会づくり、人づくり」のための活動を行っているお寺がたくさんあります。ぜひその素晴らしい活動、そのノウハウを共有することで、僧侶の意識が高揚し、全国の地域社会のためのお寺の活動が活発になることを願っています。