宗務院
2012.03.15
地域社会とお寺の活性化アイデア コンペティション 結果発表!!【アイデア部門】
【主催者より】
今回は〈地域×コミュニティ×お寺の活性化〉をテーマとして、平成23年12月1日~平成24年1月31日まで、地域社会のためのお寺の活用アイデア及びお寺の活性化活動を募集しました。幅広い年代、職業、地域から、たくさんの素敵なアイデアをご応募いただきまして、誠にありがとうございました。
応募作品の中には、日本を元気にしたい!お寺がこうあって欲しい!という皆さまの熱い想いがたくさん込められており、まちとお寺の未来を皆さまと一緒に考える貴重な機会となりました。
「つながり(縁)」は、かけがえのない大切なものです。「縁」に感謝し、「縁」を大切にしていくことができれば、地域社会は元気になるはずです。お寺はかっての寺子屋のようにその縁を結ぶ「地域の縁側」として、笑顔あふれる地域のコミュニティを生み出す場所でありたい。
これから皆さまからいただいたアイデアとお寺が出会い、一つでも多くのアイデアが実現し、日本中でたくさんの笑顔に出会えることを切に願っています。
以下の通り、審査の結果、受賞者が決定いたしましたので発表いたします。
※作品名をクリックすると、アイデアの詳細をご覧になれます。
【応募総数】221通
【審 査 日】 平成24年2月28日
【審 査 員】 真野洋介(東京工業大学准教授)
のかたあきこ(旅ジャーナリスト、まちづくり人案内人)
堀内克彦(宿坊研究会代表)
【受賞作品】
大 賞
【審査員からのコメント】
- 大屋根や軒下、建具、庭など、お寺特有の建築物と空間を公園のように開放し、人々が集う場所にするというダイナミックな提案です。1枚のイメージパース(透視図)の中に、お寺のあるべき姿と空間像が簡潔に表現されている一方で、新しいお寺の役割を喚起する提案であることが最も高く評価されました。
- 「開かれたお寺」を象徴する絵に魅せられました。建築が向かうべき、理想的なあり方を示しているように思います。今ある建物を活用しながら、どこまでこの雰囲気に近づけられるか、そして何より、この場を活用して何をしていくかが、次のステップとしては大切だと思いました。
- 今回の応募作の中で、最も視覚的にお寺の役割を示してくれた作品でした。お堂の壁を取り払うことでお寺を誰でも入れるものにというコンセプトを、一目で伝える視点に脱帽です。親しみやすさと共に、お坊さんの意識を外向きに広げる効果も期待できます。この開放的なお堂をどう活用していくかが今後の焦点になりますが、一つの例として一般になじみの薄い仏前結婚式を舞台を利用して華やかに構築するなど、工夫次第でいくらでも活用可能な可能性を感じるアイディアでした。
優秀賞
/おきたりゅういち
【審査員からのコメント】
- 今回の応募作の中では、もっとも明確に地域活性効果をイメージできる作品でした。自由に入れることを目につく形で示すことは、今後のお寺には必須の取り組みと私は考えています。その課題に目を向け、『まちの駅』という具体的な手段を提示されたことは、それだけでも大賞級のアイディアではないかと考えました。またもう一つの『生きテク』は自殺対策に有効な事例集であり、悩み相談を受けたお坊さんをサポートできる有効なツールです。人が足を運ぶ仕組み。お寺が人を受け入れる仕組み。両面からの組み合わせとして推薦させて頂きました。
- 人の問題を解決する「生きテク」という重いテーマを扱いながらも、イラストやデータ、調査等を駆使して、見た目にも分かりやすくお寺の機能の拡張性を示した点が評価されました。
- お寺が交流の場となり、経済活性の拠点となる。人材バンクなどの試みも、全世代に「生き甲斐」「やりがい」を見いだす活路となると思いました。絵巻物仕立てのアイデア集も、インパクトがありました。
優秀賞
坊’s Hostel (ぼうずほすてる)
~日常から一歩離れてお寺に泊まろう!~
(神奈川県、会社員)
【審査員からのコメント】
- 従来の宿坊とはまた違う「Hostel」として、全国にあるたくさんのお寺が気軽に滞在できる場所になったら、各地域で、また社会全体として大きなインパクトをもたらすであろうという期待が持てる提案です。
- 日本各地に宿坊はありますが、学生の貧乏旅行や海外からのバックパッカーが泊まり歩けるお寺はほぼ皆無です。一方でお寺には眠った資源が多々あり、格安宿泊のニーズに応えることは十分に可能でしょう。またこのアイディアの秀逸なところは、日本の学生がお寺で自己を振り返り、さらには円高や震災などで日本への心が離れた海外からの旅行者にもアピールできることです。日本の心にふれる旅は経済的にも文化的にも、長期視点で日本を活性化させる起爆剤になっていくと考えています。
- とても面白い、そして実現して欲しいアイデアです。お寺は学ぶべきものが多い特別な場所。建築、行事、教え、食事、作法、交流などのすべてが一度に体感できるシステム。若者の旅行離れが激しいと言われる昨今、気軽に泊まれて、特別な体験ができ、思い出がたくさん作れる空間になることで、全国を旅する若者が増えるといいなと思います。旅は、生きる上で大切なことを教えてくれます!
優秀賞
(千葉県、大学院生)
【審査員からのコメント】
- 景観をデザインするという応募者の専門性を活かして、 お寺の庭や外部空間を段階的に開いていくという提案。お寺で実施されるさまざまな行事を外で行ったり、外から見ることができるようにすることを、庭園化したお寺での「花見」というコンセプトにまとめた点が評価されたものです。
- 全国を旅していて、四季の植物に教えられること、たくさんあります。そこには多くの場合、自然を大切に守ろうとする地域の人がいます。お寺はまさにその舞台。「そこに行けば気持ちが安らかになる。よい雰囲気を保ち続けるために皆で手入れをする。素敵なものを広く伝えたい、自慢したい。発信する!」という、よい循環が頭に浮かんで来るアイデアでした。
- 大賞の『大きな屋根の下から広がるコミュニティ』とコンセプトは非常に似通っていますが、その方法論は境内を囲う敷地の壁を取り払うこと。実現性や効果を考えると大賞作をしのぐ可能性も感じましたが、都会のお寺向けであり地域の活性というテーマで比較した結果、優秀賞とさせて頂きました。また壁を取り払うアイディア以上に面白かったのが、座禅や写経を境内の外から見える位置で行うこと。これは私自身も考えなかった発想で、寺社体験のスペシャリストを自負する者としては先をいかれた悔しさを感じた良アイディアでした。
入 賞
(京都府、会社員)
【審査員からのコメント】
- お寺の訓話と一枚の往復葉書からコミュニケーションを広げていくという、極めてシンプルな仕組みが評価されたもです。文通から何が生まれてくるのかについては評価が分かれましたが、ちょっとした工夫で多くの寺院が取り組めるのではないかという期待が集まりました。
- 気軽にはじめられるアイデアだと思いました。双方が、往復はがきに書き込まれた心を読み取ることが大切です。文章力云々ではなくて、気持ちが込められていれば伝わるものだと個人的に思っています。今のご時世、ソーシャルネットワークを活用するのも、いいかもしれません。ただそれはあくまで手段としてで、最終的にはフェイスtoフェイスで、リアルな交流の形がお寺で生まれるといいなと思います。
- お寺の門前にある訓話を活用しようという視点に、独自性を感じました。ただし往復はがきのやり取りだけではコミュニケーションに限界があり、地域活性に繋げるためにはさらなる工夫が必要です。例えば過去の訓話をおみくじにして自由に引けるようにする、フェイスブックに訓話を並べて「いいね」で投票してもらう、またそうしたコミュニケーションを通してお寺に足を運んでもらう仕組みを作るなど、試行錯誤が必要になるでしょう。日々掲げられる訓話にどれだけ情熱を持って創意工夫を図れるか、それをお寺に問いかけるためにも表彰したいアイディアです。
入 賞
/松本貴大
/櫻井尚道
【審査員からのコメント】
- 提案の中のひとつ「お寺に図書館機能を持たせ、子どもや世代を超えたつながりをつくる」という部分が高く評価されました。さまざまな人の出会いやつながり、教育などを通じた一連のソフト提案も良くまとめられています。
- お寺を学びの拠点にしたい、というアイデアは多数寄せられました。お寺には歴史があるためだと思いますが、知的好奇心を満たすことで、人は人間らしく豊かになれるのだろうと感じています。学びの発想から図書館システムへの発想はよかったと思います。これは今まさに全国の図書館が取り組もうと頑張っている内容で、無料貸本屋からの脱却には、交流やワクワクする仕掛けが不可欠。お寺を舞台に、個人の本を媒介にしながら、たくさんの会話や学びが生まれる仕組みを、地域のみなさんで作っていけたらいいですね。物々交換や物産展などのアイデアも、実践できそうです。
- 多くのアイディアを盛り込んだ作品でしたが、その中で『図書館システム』を受賞作として選ばせて頂きました。図書館システムは他の方からも多く寄せられたアイディアでしたが、本を集めて閲覧することよりも、その本を活用したコミュニケーションに主眼を置かれていることが他のアイディアより抜きん出ており、受賞の決め手となりました。
子ども特別賞
ご応募いただいた作品の中で少年少女の皆さまからとても夢のあるアイデアをいただきました。よって、「子ども特別賞」として表彰いたします。
※後日、表彰状及び図書カードをお送りいたします。
参加賞
221通全ての作品を賞し、参加賞として、コンペ特製「ハンドタオル」をお送りいたします。たくさんのご応募、誠にありがとうございました。
※後日、応募者全員に参加賞を順次お送りいたします。
【総 評】
今回のコンペは、お寺の公共空間としての可能性と、地域文化のアーカイブ(蓄積する場所)としての可能性を多岐にわたり提案していただいたように感じました。特に日常生活との関係が一見希薄に思われる、大都市でのお寺の隠された役割を気付かせる提案が多かったと思います。一方、コンペ方式で難しかったと感じられたのは、様々な提案を実施に移す際の具体的アイディアや連携方法などに関する点でした。今回寄せられた提案に基づき、多様な実践が各地で生まれてくるためには、各地での活動を中間的に支援したり、助成したりする仕組みや、情報交流の場・媒体なども必要だと思います。(真野洋介審査員)
全国から寄せられたアイデアを拝見するうちに、「人々が今なにに不安を感じ、なにを求めているか」が見えてくるような気がしました。キーワードは「学び」「交流」。古くから「地域交流の拠点」として、そして「心の拠り所」としてあったお寺の未来について、みなさん真剣に考えています。素敵なアイデアの数々が実現されることを願いつつ、暮らしやすくてワクワクする社会を、自分も含め、ひとりひとりが作っていかなければと感じました。ありがとうございました。(のかたあきこ審査員)
まずは初めてのアイディアコンテストでありながら、221通もの応募があったことに素直に驚きました。この数字はお寺に対する期待の高さであり、逆にもどかしさの表れでもあると感じています。全体的に多かったアイディアは「仏教体験会」「年配者や子供の寺子屋」「婚活」「防災拠点」「コンサート・フリーマーケット・習い事等の会場」「寺カフェ」などでした。
その中で受賞された作品は、どれもお寺に対する独自のアプローチがありました。読ませていただき、これなら地域が活性化するとワクワクできるものばかりです。それは大掛かりなものあり、ほんの小さな気づきありと様々ですが、未来のお寺が地域に貢献するための、それを実現する糸口になることができるか、という視点から選ばせて頂きました。もちろんアイディアは貴重な種ではありますが、それを募った日蓮宗として、また選考した審査員として、それぞれの立場から芽吹かせ育てていくためのアクションが必要になります。真に開かれたお寺とはどうあるべきか、それがアイディアを具体的に形にしていく中で問われていくことになるでしょう。(堀内克彦審査員)