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あんのん基金

平成25年7月10日

JVCパレスチナ・ガザ「子どもの栄養失調予防事業」

特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンター(JVC)

団体名:特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンター(JVC)

事業名:JVCパレスチナ・ガザ地区「子どもの栄養失調予防事業」

支援金額:45万円

【団体紹介】:日本国際ボランティアセンター(JVC)

JVC日本国際ボランティアセンターは、1980年2月27日設立された特定非営利活動法人(認定NPO法人)です。JVCは、人々が自然と共存し、安心・安定して共に生きられる社会を築くことを目的とし
(1)困難な状況にありながらも、自ら改善しようとする人々を支援し
(2)地球環境を守る新しい生き方を広め、対等・公正な人間関係を創りだすことに取り組んでいます。
そのために、環境保全と自給を基本にした「農村開発」「緊急救援」「平和活動」「市民のネットワークづくり」などさまざまな活動を展開しています。

JVCは、現在、カンボジア、ラオス、南アフリカ、タイ、アフガニスタン、パレスチナ、イラク、スーダンの9か国と日本の東北で活動をしています。

活動の柱としては、
(1)人々の暮らしを守るための「地域・農村開発」
(2)命を守るための「人道支援」
(3)対話を通じて平和な社会をつくる政策提言
の3つがあり、人々が自然と共存し、安心・安定して共に生きられる社会を目指して包括的な取り組みを行っています。

【支援事業】:JVCパレスチナ事業:パレスチナ・ガザ地区「子どもの栄養失調予防事業」

度重なるイスラエルからの軍事侵攻と封鎖の継続によって、ガザ地区(以下ガザ)で安定的に食料を得られる人々は全人口の3分の1にすぎず、慢性的な栄養不足が問題となっています(国連食糧農業機関(FAO)報告書、2009年)。
栄養状態の悪化は特に5歳以下の子どもの間で深刻で、主要栄養素の不足に加え、微量栄養素の不足が、身体、運動能力、精神、行動、認知、言語における発展を妨げ、免疫能力も低下させています。そのような中、子どもたちに蔓延している貧血と栄養失調は見た目には分かりにくいこともあり、「見えない飢餓」とも言われ、母親や近隣住民が気づかない場合も多いことが特徴です。

こうした状況を緩和・改善するために、JVCは
(1)封鎖状態からの解放のための政策提言
(2)食糧支援と医療支援
(3)両親や近隣住民の貧血や栄養失調に関する意識・知識の向上に向けた教育支援が必要不可欠であると考え、2006年以降、ガザで子どもを対象にした栄養失調予防関連事業を行っています。

あんのん基金に申請する2013年度の対象地域である、ガザ地区北部にあるジャバリヤ市、ビルナージャは、2012年8月に行った独自調査の結果、ガザ地区の中でも特に子どもたちの健康状態が悪く、また母親たちの子どもの健康・保健に関する知識が低いことが明らかとなっています。そのため、支援の必要性が高い地域と考え、JVCとして事業実施が決定しています。

【事業概要】

目標:対象地域において、地域住民によって子どもの健康を持続的に守るしくみが出来上がり、それにより子どもの栄養状況が改善されること。

受益者総数:
●直接的受益者 5,000人(内訳;事業に関わる地域ボランティア30人、対象地域の女性3,345人(妊婦も含む)、対象地域の子ども:1,625人)
●間接的受益者 3,275人(内訳;直接的受益者の家族3,215人、一次医療施設のスタッフ20人、幼稚園スタッフ20人、地域組織のスタッフ20人)

活動内容:
(1)栄養保健指導員による地域女性ボランティアの育成と実地研修(3か月間)
(2)栄養保健指導員と地域女性ボランティアによる家庭訪問タイプ①⇒子どもの健康調査及び家庭登録
(3)栄養保健指導員と地域女性ボランティアによる家庭訪問タイプ②⇒直接的受益者への保健・栄養に関するカウンセリング・保健指導
(4)栄養保健指導員と地域女性ボランティアによる地域女性に向けた教育セッションの共同実施
(5)ネットワー作りに配慮した地域社会組織、幼稚園、一次医療施設等への日々の訪問と活動への参加の呼びかけ
(6)モニタリング、評価、政策提言

【事業内容】

この事業は、ガザの子どもの栄養失調を地域レベルで改善・予防することを目的としています。また、地域で育成されたボランティアが活動主体となって、研修で学んだ子どもの栄養・保健に関する知識を地域に広げていき、地域ぐるみで子どもの栄養失調改善に取り組む枠組みを作っていくところに特長があります。
支援対象者は、ボランティア30名(女性)と、5歳以下の子どもとその母親や家族など5,000人。いずれも事業対象地域内に暮らしている人々です。

ボランティア30名は、2013年5月から座学研修を受け、必要栄養素や子どもの成長、コミュニケーションに関する知識を学び、本事業の活動主体として必要とされている正しい知識を身に付けます。座学研修の後には、実地研修として、現地パートナーNGOである「人間の大地」*のスタッフの指導を受けながら、地域の各家庭を訪問し、栄養素の高い食材、調理方法、栄養失調や貧血、くる病の見分け方、正しい授乳方法、母乳育児の意義について住民にカウンセリングを実施したり、調理実習を含む教育セッションを行ったりします。

また、1回目の訪問では、5歳以下の子どもへの栄養状態検査を行い、対象地域の子どもたちの健康状態を調べるとともに、重度の栄養失調児や貧血児が発見された場合は、クリニックへの紹介や通院費の提供、フォローアップ・カウンセリングを実施し、本当に困った人が孤立しないように支援します。
ボランティアたちはこれらの活動を通じて、座学で得た知識を自分の物にし、スタッフが事業地を離れても同じ活動を続けられるように地域の人との関係を構築します。

このように本事業では、子どもの栄養失調予防を活動の大きな目的としながら、活動の持続性・自発性・相互理解も目指しています。加えて、ガザ地区の厳しい状況の根本原因が、政治的な理由に基づくガザ地区の封鎖や度重なる軍事侵攻にあることも念頭におき、現地での活動のほかにも、国際社会が生み出した「封鎖」という社会悪を見直すための国際社会や政府に向けた政策提言も行うよう努力することで、包括的視点に基づく国際協力を続けています。

【事業の意義】

この事業では、重度の栄養失調児や貧血児へは、医療施設への紹介、通院費提供、重点的なカウンセリングを実施していくことで、国際社会がガザの人々と連携し、人々の苦難を和らげるために尽力し、包括的な国際協力支援であり続けることを目指しています。そのため、単なる子どもの栄養改善のみならず、相互扶助の拡散、活動の持続性・自主性の観点から大変有意義な事業であり、モノをあげるに留まらない国際支援の在り方を見つめ直す上でも意義深い事業であると考えています。

さらに、問題の根本が政治的な理由に基づくガザ地区の封鎖や度重なる軍事侵攻にあることから、この事業では一概に人々の自助努力のみに依存することをよしとせず、国際社会が生み出した封鎖という社会悪を見直すための国際社会や政府に向けた政策提言も傍らで行っています。そういった意味で本事業は、栄養不足という目先の問題を撲滅することのみにとらわれず、それを生み出す社会構造そのものの問題にも着眼し、鳥瞰的な視点での活動も目指しています

パートナーNGO「人間の大地」:Ard El Insan(AEI):は、1997年にパレスチナ・ガザ地区の地域組織として設立された、パレスチナ初の、子どもと母親を専門に支援する非政府・非営利団体です。毎年選挙で組織される評議員により意思決定が行われ、提携組織にはセーブザチルドレン、JICA(日本国際協力機構)、Oxfamなどが含まれています。「人間の大地」は、地域レベルでの健康づくりと栄養改善に着眼し、一次医療の保護と治療に基づく健康サービスの提供、健康教育と精神支援を通じて、子どもに共通の病気を減少させることを目的として、ガザ地区の子ども、母親と妊娠期にある女性、貧しい家族・社会から取り残された家族を対象に、
(1)質の高いサービスの提供
(2)効率性と影響力の確保
(3)透明性と説明責任の確保
という3つのポリシーの基に活動しています。

2006年からはJVCとも提携をスタートし、「ガザ地区の幼稚園児の栄養失調予防事業:ミルクとビスケット配布事業」や、「栄養教育を通じた持続的な栄養改善事業」を長年にわたり共に実施しており、現在は、ガザ地区北部にてAEIスタッフが、JVCの長期派遣職員と共に活動しています。

【支援の使途】

この事業は、現地パートナーNGO「人間の大地」で働くスタッフ8名とボランティア30名の存在に頼っています。しかし、AEIスタッフの給与は低く、物価が日本の70%というガザ地区において、基本的な生活を保証するのさえ難しいのが実情です。また最近の円安により、現在の低い給与ですらJVCの自己資金だけでは賄えない状況に陥っています。あんのん基金からのご支援は、AEIスタッフの給与を中心とした全体の運営費にあてさせていただきます。

【社会に向けて】

日本国際ボランティアセンター(JVC)は、1980年にインドシナ難民の救援を機に発足し、現在、アジア、アフリカ、中東、そして日本の震災被災地で活動している国際協力NGOです。

中東地域やアフリカで紛争の影響を受けて人々が暮らす地では医療をはじめとした人道支援を行っているほか、東南アジアなどで急激な変化にさらされている農村で環境保全型の農業を通して暮らしの改善にも協力しています。

また、シンポジウムなどのイベントや、書籍・提言書の発行などを通し、現場の声を政府や社会に届ける政策提言・アドボカシーの活動にも力を入れています。足りないものをあげるのではなく、つくる方法を一緒に考える。紛争で傷ついた人を助けるだけではなく、紛争を起こさない道をつくる。「問題の根本にこだわる」。この思いがJVCの活動を貫いています。

JVCでは、会員を募集しています。活動に携わるのは主にスタッフですが、これまで多くの人の力と知恵を集めてきたからこそ、現在のJVCがあります。活動に賛同していただける方は、是非JVCの会員になり、活動を身近に感じていただけると心強いです。(年会費は個人会員1万円、団体会員3万円です。)

活動の内容をもっとよく知りたいという方には、毎月、東京事務所でオリエンテーションを開催しております。スタッフがわかりやすく説明しておりますので、是非ご参加ください。

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