令和5年7月
無料塾『慈有塾』における無料学習支援事業
団体名:一般社団法人 慈有塾
事業名:無料塾『慈有塾』における無料学習支援事業
実施期間:2023年4月~2024年3月
支援金額:50万円
【活動内容】
1.取り組んだ課題や実践した目的・実施内容について
①生徒に関する課題
「貧困の負の連鎖を学習支援からアプローチ」
今日の日本において、99%が高校進学しますが、残りの1%は中卒という状況にあります。その1% に該当する若者たちを支援することは、民間の営利組織では難しいのが現実です。そこを補うべく、学習支援を行う非営利団体が必要であり、我々は最低限必要な高卒認定試験や大学、専門学校の受験勉強 の個別指導に取り組みました。また慈有塾では、高卒認定資格取得後、大学進学を希望する生徒が増えつつあります。ただ、大学進学となると、適切な努力(継続・自己管理など)を実践する必要があります。慈有塾の生徒は、様々な背景を持つ生徒が多く、適切な努力を実践していく経験は初めてという人が多いのが事実です。一人一人の特性に合わせた適切な学習支援や心身のマネジメント、気晴らしの機会を提供も取り組みました。
②若者の担い手に関する課題
「大学生に無料塾に携わる機会提供 (アルバイト雇用・1日講師)」
今まで、講師陣は、40代以上の企業勤めの方に、ボランティア(無償)として従事して頂いていました。しかし近年は、大学のボランティア団体でも無料塾のような地域の子どもたちへの学習支援活動を展開しており、学生自身が担い手として活動することの需要が高まりつつあると考えられます。 そこで、慈有塾では、福祉・教育分野に興味があり、将来的にそれらの分野に従事することを強く望んでいる学生を有償で雇用しました。支援対象者である若者を支援することはもちろんのことですが、支援の担い手となる若者を育成することも大事なことであると考えています。2023年には、学生を新たに1人アルバイトで雇い(現在合計3名の学生が従事)、また学生2人を講師として1日無料塾事業インターンとして参加していただきました。また、慈有塾の生徒にとって、歳の近い若者が講師であることから、良きロールモデルとして講師を見ている生徒が多く、両者にとっても好循環が生まれています。慈有塾は、今後も両若者の支援・育成にも力を入れていくことが目標の1つです。
2.実施した活動の詳細
- 通常授業
週1回1コマ90分を基本とした授業で、高卒認定資格や大学受験に向けた学習支援に取り組みました。場所は多摩教室もしくは葛飾教室のいずれかで生徒が通いやすい方で行いました。2023年度の多摩・葛飾の両教室の生徒数は、高校生3人、その他(中卒の16〜30歳台)16人で、高卒認定試験と大学受験に向けて学習に取り組みました。
③高卒認定対策集中講座
慈有塾では、高卒認定試験の対策に向けて、集中講座を年2〜3回開催しています。集中講座は、全科目の勉強を網羅できるよう、高卒認定試験で取り扱う8科目の講座を開き、集団授業で行なっています。2023年度は、ゴールデンウィーク高卒認定対策講座(2023/5/4開催)、高卒認定古文漢文対策講座(2023/10/15,21)、秋季高卒認定対策講座(2023/11/26,28,29)を実施しました。
ゴールデンウィーク高卒認定対策講座では、青山学院大学教育人間科学部の学生N.Tさんを1日講師として招き、生徒ともに学習を取り組んでいきました。秋季高卒認定試験対策講座では、早稲田大学人間科学部の学生S.Hさんを1日講師として招き、生徒ともに学習を取り組んでいきました。手伝っていただいた両学生ともに、福祉・教育・心理の分野に興味を持つ学生であり、大学の授業にはない、現場経験を提供することが出きました。
④葛飾教室のリニューアル開校
コロナ禍により一時中断していた葛飾教室を2023年4月より葛飾の公共施設である「にこわ新小岩」のフリースペースにて再開しました。その後、2024年1月より葛飾区四つ木の「大森マンション」を賃貸契約し、葛飾教室をリニューアル開校しました。現在は、2名の生徒が在籍しています。2名とも江戸川区の母子家庭支援施設からの紹介であり、今後も他の支援団体との連携を拡充していきます。
⑤啓発活動
2023年度は啓発活動として、「恵泉女学園大学で無料塾事業の講演会(代表 髙木、現生徒1名が登壇)」、「青山学院大学にて無料塾事業及び慈有塾の活動に関する講義(葛飾教室長 宮道)」が行われました。また、「無料塾シンポジウム全国大会2023」への参加や「一般社団法人多摩循環型エネルギー協会主催のセミナー」など意見交換の場や地域への啓発活動も取り組みました。
⑥地域や他団体との協力
食関連の支援として、「認定NPO法人おてらおやつクラブ」さんや「八王子フードバンク」さんから頂いた食品や、「多摩ニュータウンキリスト教会オリーブきっちん」さん手作りのお弁当を生徒に配布をしています。食品寄付については、両団体とも不定期(大体、月2くらいで食品寄付がある)、お弁当については月1で配布という頻度になっています。
催し物として、「東京みなみワイズメンズクラブ」の方々と合同でクリスマス会が12月5日に開かれました。生徒にとって、大人数でのイベント交流会は良い機会でした。また、「東京みなみワイズメンズクラブ」の方々は、採れたてお野菜の寄付などのサポートも定期的にして下さっており、慈有塾スタッフや生徒ともに日頃の支援の感謝を伝えることができつつ、人の温かみを実感できるものでした。
3月には「ひらけ、PEACE!」さんと一緒に、地域の小学生と慈有塾の生徒を連れ多摩動物公園へ行ってきました。「子供に社会経験を、保護者の方に自由な時間を、大学生に自己成長の機会を提供する」をモットーに活動しており、慈有塾の生徒も一緒に楽しんで子供たちと動物園を見回っていました。
3.本活動から得られたもの、反省点、課題、今後への発展性、等
〈得られたもの〉
現在、慈有塾に在籍している生徒に学習支援を滞りなく提供できたことはもちろんですが、学生アルバイトの講師が増えたことにより、歳の近い20歳前後の生徒は活気づいたり、素でいられる場面が増えたと感じられます。慈有塾の生徒の背景は様々です。そのため、学習支援でテストの点数が取れるようになることだけが大事ではなく、それと並行して心の安らぎや楽しさ、日常の苦難などを人と共にする時間も大事になってくると考えられます。新しい学生講師の加入や高卒認定対策講習会等のイベントを増やすことができたのは、若い生徒にとって意味のあるものでした。
また、早稲田大学と青山学院大学の学生に学習支援機会を提供したことで、今回参加した学生の後輩数名が、慈有塾の活動への参加の流れが出来、早くも好循環が作り出せそうな状況です。
〈反省点・課題〉
課題点として、講師の人数確保が一番大きなものとしてあげられます。コロナ禍以降、ボランティア登録しているものの生徒を担当してくれる講師が減少しつつあります。学生講師が加入したことにより、滞りなく学習支援が提供できていますが、学生もいつかは卒業し、社会に出て働くステージに行ってしまいます。さらに次世代の学生を取り込めるような循環を作り出すこと、大人のボランティア講師の新規獲得や維持への取り組みを具体的に講じていく必要があります。
〈今後への発展性〉
無料塾事業を学習支援に留まらず、人との交流の場や、生徒・講師の人材育成の場としての機能を高めることで、寄付や助成だけに頼らない自走型の無料塾になると考えています。