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あんのん基金

平成26年8月8日

バングラデシュ北西部に住む先住民族・サンタルの子どもたちへの文化教育支援

シャプラニール=市民による海外協力の会

団体名:シャプラニール=市民による海外協力の会

事業名:バングラデシュ北西部に住む先住民族・サンタルの子どもたちへの文化教育支援

支援金額:38万6千100円(26年8月)

【団体紹介】

市民の自発的参加と責任に基づき、南北問題に象徴される現代社会の様々な問題の解決のために必要な海外協力等の諸活動を行い、すべての人が持つ豊かな可能性が開花する社会の実現を目指すことを、その目的としている団体です。

【活動内容】

(1)海 外

バングラデシュ及びネパールには現地事務所と駐在員を置き、現地事務所のないインドと合わせ、南アジア3ヶ国で活動を実施。社会や他の援助団体の支援から「取り残された人々」を支援しています。具体的には、バングラデシュ・ネパールにおいて、児童労働がない社会を目指し、家事使用人として働く少女への支援やレストラン児童労働の予防と削減を支援しています。また、災害に強い地域作りを目指して、サイクロンや洪水が多い地域での地域防災を支援しています。この他、先住民支援、チョール(中洲)における児童教育支援、障害者の社会的地位及び経済状況の改善支援などを実施しています。一方、インドでは、紅茶園スラム居住者などの支援を行っています。

(2)クラフトリンク(フェアトレード)

バングラデシュ・ネパールの手工芸品(クラフト)を通じて、「作る人」「売る人」「使う人」がつながるように(リンク)との想いを込めて、生産者と消費者が対等な立場で行う貿易(フェアトレード)を推進。クラフトを扱う現地生産団体と協同で、生産者の生活向上を目指しています。同時に、日本で商品を手に取ることで、作っている人の暮らしや、私たちのこれからの暮らしについて考え、行動するきっかけになって欲しいという想いと共に活動を続けています。

(3)国 内

日本に暮らす私たちも南北問題の当事者として生活や社会のあり方を問い直し、見直すきっかけ作りに取り組んでいます。そのために、国際協力入門講座や各種講演会、スタディツアー、開発教育教材の販売や貸出利用を実施しています。また、東日本大震災発生直後から、福島県いわき市で支援活動を続けています。

【支援事業について】

サンタルと呼ばれる先住民族は、独自の言語や文化、習慣を保って生活してきています。サンタルは文字を持たず、言語体系もベンガル語(バングラデシュの公用語)と全く異なっています。そうしたサンタルの子どもたちが、バングラデシュで大多数を占めるベンガル人の子どもたちと同様に、公立小学校での教育を継続して受けられることを目指し、以下の取り組みを実施しました。

(1)小学校就学前の子どもたちに対して

4~5才の子どもたちを対象に、ベンガル語による授業に慣れておくため、パートナー団体GBKの運営による就学支援教室を開催(男38人、女49人)。教科書や黒板、チョーク、ボールペンなどを準備する他、制服や昼食代も提供しました。うち35人は、就学支援教室を卒業して2015年度から公立小学校に進学しました。また、就学前支援教室を卒業して公立小学校で学ぶ子どもに補習授業を実施しました(男39人、女59人)。補習授業のおかげで、ほとんどの子どもが無事2年生に進級できました。

(2)就学支援教室の子どもたちの親や家族に対して

子どもを通学させても文字が書ければ十分とし、学校を辞めさせて働かせることが多い保護者に対し、子どもの生活環境改善へ向けた意識啓発を実施しました。例えば、子どもたちの栄養サポートのための家庭菜園用の種や苗を提供し、野菜作りについて教えながら、子どもの教育に対する関心を高めるために必要な啓発や知識伝達も行ないました。その結果、子どもの毎日の継続した通学が確保できたほか、子どもの制服を頻繁に洗い、当初は制服やノート、給食等支援されていた学用品を自ら買い揃える保護者が増えました。

(3)学校(教師)に対して

また、サンタルとベンガルの子どもたちが一緒に学べる環境づくりをめざし、学校運営委員会にサンタルの視点を導入するよう働きかけました。その結果、2012年には1名だったサンタル人学校運営委員は、現在では10名に増えました。通学奨励金を受給できるサンタルの子どもの数も、大きく増加しています。

(4)地域に対して

なお、パイロット事業(3年間)の成果を踏まえ、2015年4月以降の本格的な事業展開を前提とした活動の立案を、本年度中に実施しました。特に、教育機会の提供は本来、学校や行政の役割であるという認識を確認しました。実際、2012年にはほとんど存在しなかった公立就学前教室が、現在では増えています。以上から、GBKによる独自運営の就学支援教室ではなく、就学前教室を併設する公立小学校を支援することとしています。

【社会へ向けて】

バングラデシュには35を超える先住民族が暮らしていますが、丘陵部の先住民族と平野部の先住民族に大きく分けられます。丘陵部の先住民族は、バングラデシュの主要民族であるベンガル人の入植によって生活の場を奪われ、虐げられてきている現実がありますが、この問題は国際的にも認知され、限定的ではあるものの、国連等の支援も入っています。一方、サンタルを含む平野部の先住民族は、地理的に広いことや、民族ごとに習慣が違う等の背景から、これまで貧困層支援の対象となることはあっても、「先住民族支援」の対象とはならず、取り残されてきました。そこでシャプラニールでは、平野部の先住民族に焦点を当て、サンタルへの支援を開始しました。 サンタルはバングラデシュ平野部における先住民族の中で最も人口が多く、40万人程度と推定されています。それでも、他の先住民族同様の厳しい状況に置かれています。サンタルの子どもたちが教育を受けることで、将来的には彼ら自身の力で、先住民族の権利獲得や生活向上を達成していけることが期待されます。

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