宗務総長ご挨拶 令和7年
「繋がるいのち 繋げる想い」
令和7年の新春を迎えるに方り、新年のご挨拶を申し上げます。
昨年の元日に発生した能登半島地震から早くも1年が経過いたしました。
この大規模災害に加えて、9月の豪雨により、ようやく整いかけていた生活基盤や歴史ある地域文化に甚大な影響が及び、未だ復興の途上にあります。
ここに、被害に遭われた全ての皆さまに心からのお見舞を申し上げるとともに、犠牲となられた全ての方々の追善菩提をお祈り申し上げます。
この災害により、先人たちによって護持されてきた法城が損壊し、失われてしまったことは、誠に憂慮に堪えぬものであります。
宗門といたしましては、一刻も早い復興のため、総力を結集して物心両面にわたる支援をお誓い申し上げます。
日蓮聖人のお言葉、「異体同心なれば萬事を成ず」の如く、宗徒1人ひとりの心が1つになれば、必ずや復興を果たし、能登の地が再びお題目の燈でより一層明るく照らされると固く信じております。
さて、我らの総本山である、身延山久遠寺においては、久しく私どもをお導きくださいました、第92世法主・内野日総猊下がご遷化遊ばされ、1年近くが経つということに、驚きといまだ別離の忍び難き思いがございます。ここに、内野猊下のご功績に敬意を表し、謹んで増円妙道をお祈り申し上げます。
このような中にあって、宗門では来る令和13年にお迎えする「日蓮聖人第750遠忌」の準備に取りかかっております。
日蓮聖人が池上兄弟の邸宅にてご入滅される際に、6人の弟子へと託された願い、そして幼き経一磨へと伝えられた帝都弘通の夢は、今日の私たちの信行に受け継がれております。
つまり、たとえ自らのいのちが果てようとも、後生への強い想いが次の世代へと託され、繋がってゆくのであれば、どれだけの時を経ようとも、その想いは不滅であります。
今日に至る歴史は、この強い想いの数々によって紡がれてきました。まるで、糸を縦と横に織り合わせて作る布のように、人と人の想いが互いに関わり合うことによって、その時々の色や模様が現れていくものであります。
私たちが日々お題目を唱えることができるのは、日蓮聖人をはじめ多くの先師が、お題目によって社会を明るく安穏たらしめるという強き想いを繋ぎ続けてくださった結果でありますので、この有り難いご縁をいただいた私たちもまた、次なる世代に伝える者として、矜持と覚悟をもって、お題目を唱えていかなければなりません。
日蓮聖人第750遠忌に向け、今日まで多くの先師・檀越が身命を賭して繋げてこられた想いを、確かに未来へと繋げられますよう、「いのちに合掌」の布教方針のもと、今こそ日蓮宗宗門全体が一体とならんことを念じて止みません。
また、本年は終戦80年に当たります。6月には大本山池上本門寺に於いて宗門法要を執り行い、戦没者の追善菩提ならびに世界立正平和を祈念し、先人たちが望んだ争いのない世界の実現を願って参りたいと思います。
巳年を迎えた本年は、「成長」と「再生」の年になると言われております。蛇が脱皮を繰り返して成長するように、私たちもまた、先祖から繋いでいただいた己のいのちに感謝し、内にある仏の心を成長させて参りましょう。
結びに、本年も皆さまが健やかに、そして心豊かに過ごされることをご祈念申し上げ、新春の挨拶といたします。
合掌
日蓮宗宗務総長 田中恵紳